背伸びしてみる景色

5milli/みっしゃん/そのほか

《とべないとり》

ぼくは

とべないとり


ぶかっこうだね

二本のあしでのろまに歩いて

スベるのだけは得意なんです

今夜も吹雪に耐えるだけ


おなかに抱えたたまごには

夢とか意地とか執念とか

諦めきれないから

温め続けているんです

硬い殻で閉じ込めて


コンクリートから足を離したら

この空だって泳げると

ずっと信じていたんだけれど


やってみました


ただ墜ちただけでした


抱いてたたまごも粉々に砕けて

孵らなかった友だちが

見えない翼をはやしてる

白い世界が

見えると思っていたんですが


気がつけばみんな

無数の砕けた殻を踏みつけ

小さなたまごをふところに

抱えて行進していくのです


みんな

とべないとり


ぼくの

夕陽の当たったおなかが

いつまでもあったかくて


明日はまた

吹雪でしょうか

明日もまた

産まれるでしょうか