背伸びしてみる景色

5milli/みっしゃん/そのほか

《袋の中》

夜はそれぞれの袋のなか

しまって

口を縛って

こっそり持ち歩いている


僕のコンビニ袋から

あなたのショルダーバッグへと

とびうつる

肢がはえたばかりのカエルみたいに

不器用に


僕のコンビニ袋から

あなたのバッグパックへと

旅をする

羽根が乾いたばかりの雛みたいに

無防備に


着てきたコートが邪魔になって

きみのふところに忍び込む

あたたかい

明るい宵

川沿い

糸柳が揺れる


欄干に30度の角度をつけてうたう男

あの背中へ飛び乗ろうか

踏み台にして

飛び込もうか

水がぬるむのを待ちかねている

知らない花のかおり


喫煙所からはき出される煙

焼鳥屋の裏路地

河川敷、ポテチとコカ・コーラ

コンビニコーヒーの湯気

塾帰りの肉まん

エレベーターで感じる残り香


かさこそ

小さな音を立てて

持ち運ばれる

それぞれの夜たち

真冬の虫のように

ぬくもりをさがして

暗い夜と明るい夜を

すこしずつかじって

もぐりこんで

かさこそ


袋の底のゆるやかなカーブ

そこに溜まったぬかるみに

触れないように

だれかの夜に

閉じ込められないように


夜に浸した指先の

こっそりにおいを嗅いで

かたく

袋の口を結びなおす