「死ぬくらいで胸を張るな!私だっていつかは死ぬ」
結局ひとが作ってひとが演じるものなんですよね。
だからたとえばキャパが50人であろうと1000人であろうと、本質的には変わらないんだろうなあと思ったのです。
舞台「キレイ〜神様と待ち合わせした女〜」を観ました。
こういう作品を観るのは初めてじゃないかな。
こういう作品、というのは場所がフェスティバルホールでチケット代が京都音楽博覧会よりも高値で出演者がテレビでよく見る役者さんたちで、知り合いに話したら「見たかったんですよねー、[過去の出演者]さんがグラビアドンピシャ世代で、めっちゃ好きで」って羨まれたりする作品のことです。
どメジャーで、商業的に成功した作品。松尾スズキ作・演出。端的に言うと、すっげぇお金かかってそう。
でも、どこかの地下の小さな箱で演じられている作品と、本質的には同じなんだろうなあと思ったのです。
ファンタジーの中にリアルな重みが潜んでいて。せりふ回しとアクションが軽妙で。歌と音楽がすばらしくて。
そして、ひとの発する熱と、それがひんやり冷える瞬間と、心が捻じくれるような苦しみが伝わってくる。
オペラグラスでもないと表情が見えるか見えないかくらい遠くて、DVDとかで観たほうがいいのかもしれないけれど、やっぱりこれはライブなんだ、と感じました。そこに、ひとがいる。
あとは、
阿部サダヲさんの歌すごい
神木隆之介くんは天使
小池徹平かわいい
文句ない、なにひとつない
わたしはこの作品の音楽制作であり出演者でもある伊藤ヨタロウさんを見たくて行ったので、そこばっかり見ていたことをお伝えします。
白塗りの怪奇なヨタロウさんは、気がつくとそこにいる。知らないけどそこにいる。こっちを見て笑ったり嘲笑ったりしている。白くて、暗くて、光のようでも闇のようでもある。
「カミ」という役柄そのままでした。きっと、「ケガレ」ていて「キレイ」なもうひとつの存在。
「宇宙は見えるところまでしかない」などの名曲(だとおもう!)は、先にメトロファルスのほうを聴いていたので、あの大好きな曲をこの有名人がこんな素晴らしい音響で歌っている…!という意味で震えがとまりませんでした。
ある意味とても豪華な歌謡ショーでした。生オケだし。
19年前の初演のときはまだ未成年で、遠い世界で、まさか見られる日が来るとは思わなかった。
幸福な要素ばかりではなくむしろ不幸せな巡りあわせのほうが多かった気もしますが、その結果があの最高に愉快な4時間だったとすれば、まことに人生はシニカルな脚本家の手で書かれているものだと思います。
タイトルは、強烈に印象に残ったある登場人物のせりふです。
これを胸を張って言うんだものなあ。
威張るな。