背伸びしてみる景色

5milli/みっしゃん/そのほか

《袋の中》

夜はそれぞれの袋のなか しまって 口を縛って こっそり持ち歩いている 僕のコンビニ袋から あなたのショルダーバッグへと とびうつる 肢がはえたばかりのカエルみたいに 不器用に 僕のコンビニ袋から あなたのバッグパックへと 旅をする 羽根が乾いたばかり…

「死ぬくらいで胸を張るな!私だっていつかは死ぬ」

結局ひとが作ってひとが演じるものなんですよね。 だからたとえばキャパが50人であろうと1000人であろうと、本質的には変わらないんだろうなあと思ったのです。 舞台「キレイ〜神様と待ち合わせした女〜」を観ました。 こういう作品を観るのは初めてじゃない…

《とべないとり》

ぼくは とべないとり ぶかっこうだね 二本のあしでのろまに歩いて スベるのだけは得意なんです 今夜も吹雪に耐えるだけ おなかに抱えたたまごには 夢とか意地とか執念とか 諦めきれないから 温め続けているんです 硬い殻で閉じ込めて コンクリートから足を離…

《カラーズ》

おんなじ色をしてる きみとぼくは おんなじ色の 夜に両足を浸し おんなじ色の 朝焼けに肩を染める おんなじことばに笑い おんなじ味を舌に乗せ おんなじ音楽にくすりと こころを転がせて おんなじ色をしてる きみとぼくは ちがう大きさの靴をはいて ちがうバ…

《パナソニック》

《パナソニック》 大切なものは冷蔵庫の中にしまう癖がある。 実印と預金通帳とか、パスポートとか。 夏場は、ほどよく冷えた秘密が心地いい。 ゆうべ、長い手紙を書いた。 郵便料金っていま何円だったっけ。 めんどうになって、 ぶ厚い封筒のまま冷蔵庫へぶ…

ボロフェスタ2019

数年ぶりにボロフェスタのお手伝いをしました。ええ、数年ぶりなんです、とあらゆるひとへお伝えしていましたが、落ち着いてGoogle検索など行ってみた結果、どうも10年ぶりぽいんですよね。だって「つじあやの」って物販ポップ作った記憶あるからさ…。10年ぶ…

《白線》

ちいさな警報と オレンジ色の残量18% 寝ぼけまなこで コードを探す いつのまにか 夜は更けて 知らない間に 眠りこんでいたのだ 毛布の端に引っかかった 白いラインを手繰って 引き寄せた この先に朝はある のかな もう片方の手は ずっと繋いでいるから あた…

《白紙》

A4用紙がなくなりました 不満げな彼の横顔を かすめて 飛んでく白い紙ひこうき 限りある資源を大切に 貼り付いたエコマーク くるくる 紙がなくても世界はまわる 多少の瑕疵に目をつぶれば 無限に吐き出される あんなもの ぼくらいままで 何枚のコピー用紙を …

映画「WE ARE LITTLE ZOMBIES」

映画「WE ARE LITTLE ZOMBIES」 わたしはアートが解らない。エキセントリックなものはもっと解らない。だからちょっとアーティスティックな映画など、観てもわからないことのほうが多い。その中から好きなものを拾うのが精いっぱいだ。このキャラクターが好…

《おふろ考》

《おふろ考》@詩人狼村2nd・調 いいにおいのする石鹸が手から滑って湯船に落ちたゆるやかに溶けていく毎日広くて深い場所へ行きたい 泡のようになめらかに世界を滑って走れるかな川のように平然と下から上へは流れずに 海へ おぼれるシャワーの耳元でだれか…

《あんみつ》

《あんみつ》@詩人狼村2nd せせらぎを固めて四角、切り分けてお匙に乗せし、夏のあこがれ 白玉に、あんず、白桃、すっぱいミカンあの日千切って捨てた花びら 豌豆は、最後に残るわだかまり蜜と一緒にかみしめ呑みこむ こし餡と、つぶ餡、きみはどちらが好き…

「なんにも変わっちゃおらへんよ」

不意に記憶の中の声が、 たぷん、と心の中に沈んでくる。 殺伐とした日々だ。 毎日カップラーメンを買っては食べられずストックし、 毎日アイスクリームを買っては食べないまま眠りこんでしまい、 冷凍庫の中がやけにカラフルとなった。 その隣には解凍する…

「いまが分かれ目ですね」

前髪を切ることは選択肢になることすらなく、それは必然だったらしい。 「切りますね」と言われ、わたしは「はい」と承諾する。横分けにして耳にかかるくらい伸びた前髪は、いちはやく簡単に切り落とされて終わった。 「いまが分かれ目ですね」とは、わたし…

中学校の図書館というキーワードからの回想

はじめて一人で京都市内へ出かけたのはたぶん中学2年生のときで、あ、バッチリ校則違反でした(大人同伴でなければ市外へ出てはいけなかった) なぜかJRではなく、バスを使ったのを覚えています。老ノ坂を越えて。なぜでしょう。理由が記憶にない。 そうして…

「言葉が必要なんだ」

年が明けて何をしたかといえば、おそらく人様の役に立つようなことはなにもしていない。 実家に帰ってさんざん犬を撫でくりまわしたので、犬の役には立ったかもしれない。 本を読み、漫画を読み、Wikipediaを読み、ときどき音楽を聴いたり動画を観た。初詣の…

「くじけませんように」

2017年、 台湾、山の上の街、 見上げる空は妙に近くて、雲が風と一緒にものすごい速さで流れていた。 ずっと見上げていると目が回った。 紙製の風船を前に、筆を持って、 ここに願い事を書くのだと。 願い事は空に上がり、風に乗って神様のところへ届くのだ…