背伸びしてみる景色

5milli/みっしゃん/そのほか

《袋の中》

夜はそれぞれの袋のなか しまって 口を縛って こっそり持ち歩いている 僕のコンビニ袋から あなたのショルダーバッグへと とびうつる 肢がはえたばかりのカエルみたいに 不器用に 僕のコンビニ袋から あなたのバッグパックへと 旅をする 羽根が乾いたばかり…

《とべないとり》

ぼくは とべないとり ぶかっこうだね 二本のあしでのろまに歩いて スベるのだけは得意なんです 今夜も吹雪に耐えるだけ おなかに抱えたたまごには 夢とか意地とか執念とか 諦めきれないから 温め続けているんです 硬い殻で閉じ込めて コンクリートから足を離…

《カラーズ》

おんなじ色をしてる きみとぼくは おんなじ色の 夜に両足を浸し おんなじ色の 朝焼けに肩を染める おんなじことばに笑い おんなじ味を舌に乗せ おんなじ音楽にくすりと こころを転がせて おんなじ色をしてる きみとぼくは ちがう大きさの靴をはいて ちがうバ…

《パナソニック》

《パナソニック》 大切なものは冷蔵庫の中にしまう癖がある。 実印と預金通帳とか、パスポートとか。 夏場は、ほどよく冷えた秘密が心地いい。 ゆうべ、長い手紙を書いた。 郵便料金っていま何円だったっけ。 めんどうになって、 ぶ厚い封筒のまま冷蔵庫へぶ…

《白線》

ちいさな警報と オレンジ色の残量18% 寝ぼけまなこで コードを探す いつのまにか 夜は更けて 知らない間に 眠りこんでいたのだ 毛布の端に引っかかった 白いラインを手繰って 引き寄せた この先に朝はある のかな もう片方の手は ずっと繋いでいるから あた…

《白紙》

A4用紙がなくなりました 不満げな彼の横顔を かすめて 飛んでく白い紙ひこうき 限りある資源を大切に 貼り付いたエコマーク くるくる 紙がなくても世界はまわる 多少の瑕疵に目をつぶれば 無限に吐き出される あんなもの ぼくらいままで 何枚のコピー用紙を …

《おふろ考》

《おふろ考》@詩人狼村2nd・調 いいにおいのする石鹸が手から滑って湯船に落ちたゆるやかに溶けていく毎日広くて深い場所へ行きたい 泡のようになめらかに世界を滑って走れるかな川のように平然と下から上へは流れずに 海へ おぼれるシャワーの耳元でだれか…

《あんみつ》

《あんみつ》@詩人狼村2nd せせらぎを固めて四角、切り分けてお匙に乗せし、夏のあこがれ 白玉に、あんず、白桃、すっぱいミカンあの日千切って捨てた花びら 豌豆は、最後に残るわだかまり蜜と一緒にかみしめ呑みこむ こし餡と、つぶ餡、きみはどちらが好き…